シリーズ: ハラスメント対策 1 から17について

本シリーズは、JDIOマニュアル作成委員会(JDIOと東京都診断士協会認定研究会「女性診断士の会¨Ami¨」*メンバーにより編成)が執筆した、「人材マネジメントマニュアル ハラスメント編」(2021年12月発表)を、一部編集加工のうえ載録したものです。

*女性診断士の会¨Ami¨:女性を主とする経営コンサルタントのネットワーク。女性の社会的地位の向上を理念の一つとして、ワーク・ライフ・バランスや働く女性の活躍、働き方改革、ダイバーシティなどの研究に携わる。

はじめに

職場でのハラスメント(いじめ・嫌がらせ)が増加傾向にあります。ハラスメントの及ぼす影響は職場環境の悪化や生産性の低下に現れるだけに、企業のみならず経済全体にとって「たかが嫌がらせ」と軽視できない問題です。こうした認識から、ハラスメントに係る「改正労働施策総合推進法」(通称「ハラスメント防止法」)が2020年6月に施行されました。中小企業は2022年4月1日に義務化されました。

本シリーズは「ハラスメント」を防ぐ人材マネジメントの方法を解説しています。

第1章ではハラスメントの定義と種類を述べ、ハラスメント問題の影響や法令との関係を解説。

第2章では、ハラスメントが起こる背景を職場環境や経営環境の変化、また労働者の意識変化や性別の役割意識などの切り口から分析。

第3章では、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を取り上げ、バイアスが起こる原因とその弊害及び対処法を解説。

第4章では、職場でのハラスメント対策を、チェックリストや対策マニュアルとしてまとめ、日常の組織マネジメントや研修等に用いやすい形に編集しました。

ヒト資源と組織の在り方がいまほど真剣に問われることはかつてありませんでした。60年代以降の日本企業の経営において初めてと言えます。世界的に経済の成長や利益創出が困難になる中、人や組織による付加価値創出力が課題となっています。しかし職場組織の現実には逆の様相が見えます。生産性追求と組織の疲弊、コミュニケーション不全と求心力の低下、人が活力を失いメンタル不調が日常的になるといった状況です。

いま企業には人材が働きやすい環境の整備と、組織文化を変えることが求められています。多様な人材がいきいきと働くことが、生産性を高める数少ない選択肢だからです。働き手にとっての魅力ある会社づくりに、本マニュアルが役立つことを願っています。

2022年6月
一社)日本ダイバーシティ・マネジメント推進機構 専務理事
女性診断士の会¨Ami¨代表 油井文江