ハラスメント対策シリーズ:7

(2)外国人・障がい者・高齢者・LGBTの就労・職場における課題
①外国人
1)外国人労働者の増加
外国人労働者は約166万人、外国人労働者雇用事業所は24.3万ヵ所と、前年同期比で19.8万人(13.6%)、2.6万ヵ所(12.1%)増加し、2007年に届け出が義務化されて以降、過去最高となりました。(厚生労働省、2019年10月末時点)また、国内の外国人(中長期在留者及び永住者等)約283万人(2019年6月末)の約58.6%が外国人労働者になります。
外国人労働者の働く事業所の約60%が30人未満の事業所であり、製造業や卸・小売業に約20%、宿泊業・飲食サービス業に約14%の労働者が従事しています。また、国別では中国が最も多く41.8万人(全体の25.2%)、次いでベトナムが40.1万人(同24.2%)等となっており、特にベトナムの割合が近年増加傾向にあります。

図表2-3 外国人労働者数の推移

出所:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ(2019年10月末)を参考に作成

2)外国人労働者に対する差別とその原因
a.言葉の障壁
日本語が分からない、あるいは通じにくいということは、標準語・標準的な表現が分かりづらい日本人の一部と同じく、差別の要因になっています。何度伝えても理解してもらえないと、仕事が進まず相手にされない、そして差別されることになります。
採用時に日本語のレベルがどのレベルであるかの確認が不十分であったり、また、採用後の日本語学校への通学支援による日本語検定のレベルアップ対応や、議事録のチェック等による細かい指導が充分出来ていなかったりすることが原因となります。
また、外国人に伝わり難い婉曲的表現についても、留意が必要です。日本語以外でも婉曲的・主語を使わない言語・表現はあるにも拘らず、「日本語は特殊」と考えて婉曲的表現の説明をすることが不足している事も原因となるでしょう。
b.文化の障壁
出身国・地域により宗教観は異なります。例えばイスラム教では、1日5回のお祈りがあり、就学生や子供等はお祈りの時間帯等についてある程度柔軟性はあるものの、お祈りは生活の一部となっています。また、豚や、牛を食べられない場合があったり、日によっては仕事ができない日があったりなど、多くの日本人からは理解しがたい状況もあり、これが日々の生活行動に影響し、差別のもととなると思われます。外国人も日本人もお互いを知ろうとする研修や、催し物等への共同参加を効果がないと判断して放置している事も原因となるでしょう。
外国人も日本人もお互いを知ろうとする研修や、催し物等への共同参加を効果がないと判断して放置している事も原因となるでしょう。
②障がい者
1)障がい者の現状
障がい者の人数は、963.5万人で、全人口の7.6%を占める。内訳は身体436万人、知的障がい者が108.2万人、精神障がい者が419.3万人です。(2019年版 障害者白書参考資料、内閣府)
しかしながら、実際に就労しているのは約56万人で、全体の約5.8%に過ぎません。以下に、障がい者の就労者数の推移を示します。これを見ると、精神障がい者の人数に比べて就業者数の比率が非常に低いことが分かります。

図表2-4 障がい者の就労人数の推移

出所:2019年障害者雇用状況の集計結果、厚生労働省

2)障がい者に対する差別と原因
障がい者の雇用は、生産性の低下の懸念、業務の特定の難しさ、健常者との良好な関係の保持といった、企業にとって多くの課題があることから、これらが解決されないと職場における差別は顕著に表れます。この結果離職率も高く、図表2-5に示す通り、特に精神障がい者の離職率が高くなっています。

図表2-5 障がい者の1年後の離職率

離職率
身体障がい者39.2%
知的障がい者32%
精神障がい者50.7
発達障がい者28.5%
出所:働く職場2017年12月号、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構

障がい者に対する差別は、前記の企業の課題解決がなされないことの他、健常者の障がい者に対する理解不足から生じます。障がい者はある能力での障がいを持つものの、他の能力では健常者と同じかより優れている人もいるため、適材適所の配置を行えば健常者と同じ働きが出来ることを認識すべきです。
企業として、上記観点を含め、他社の成功事例を参考にする等したうえでの教育が不足していたり、対応体制の明確化や、採用者に合わせた業務空間・生産設備整備(物理的環境整備)や、障がい者の相談窓口・相談者の配備(精神的環境整備)が不十分で、障がい者の能力と業務内容の相性の見極め、及び、継続的改善が不足していたりすることも、原因となります。

(JDIOダイバーシティ・シニアコンサルタント 米倉早織)