ハラスメント対策シリーズ:8

③高齢者
1)高齢化の現状
総務省統計局の2019年10月1日現在の人口推計によると、総人口は1億2617万人で、2008年に1億2808万人とピークとなった後、2011年以降毎年減り続けています。65歳以上の人口の割合は28.4%と過去最高、75歳以上の人口の割合は14.7%と過去最高かつ世界最高となりました。
一方、生産年齢人口(15~64歳)は7,507万人で総人口の59.5%となり過去最低、1992年の69.8%をピークに低下を続けています。

2)高齢就業者に対する差別と原因
若手社員に対する調査(2019年 旅行サイト エアトリ)によると、65歳以上の方と一緒に働きたいという社員が32%いる一方、一緒に働くことに否定的な社員が約20%います。これは、親子以上の年齢差があることから、高齢者社員の実像が掴めず不安なことが原因と思われます。また、若手社員から見ると、高齢者は過去の実績に基づく考えの押し付や、自分達の意見は聞き入れないであろうという思い込みがあることが基となり、高齢者に対する差別が発生すると思われます。
また、55~64歳の方の採用時の課題は以下の通りです。(複数回答)(2019年 リクルート社の調査)
 -仕事を習得してもすぐに定年。健康状態や体力面に不安(各約40%)
 -仕事の習得に時間を要する。仕事のやり方変更困難。目標設定困難(各約35%)
このようなことから、企業としても高齢者を厄介者として扱うことになりかねず、結果として職場における差別につながってしまうと思われます。
また、高齢者と若手社員が共に尊敬し合い補完関係を築くことの重要性の認識が不足していたり、高齢者に合った仕事の割振り、体力面の衰えを補完する設備の改造、精神的補完策の実施が不十分であったりすることも、差別を助長すると思われます。

④LGBT
1)LGBTの現状
LGBTは、Lesbian、Gay、Bisexual、Transgenderの頭文字をとったもので、電通ダイバーシティラボの2018年の調査によると、就労者の約9%がLGBTです。しかしながら、実際にはその実感がないのが大方の認識であると思います。これは、LGBTが自らの意志で自らのセクシュアリティ(性のあり方)を公示すること、すなわち「カミングアウト」Coming Outが少ないことが理由です。
電通ダイバーシティラボの2018年の調査によると、カミングアウトに「抵抗がある」、「まあ抵抗がある」と答えた人が50%以上おり、これはカミングアウトによる差別を恐れているためと思われます。
2)LGBT就業者に対する差別と原因
LGBTに対しては、女性又は男性トイレの利用に制限があったり、異性カップルと同じ福利厚生が受けられなかったり、或は職場において異端視されたり、あからさまに除外されたりといったことは多く見られることです。また、就職活動においても、性別欄があり書き難かったり、面談でLGBTであることを伝えて採用を断られたりすることもあるのが現実です。
一方、近年は、就業規則をLGBTも他の社員と同様に扱う旨記述したり、福利厚生を等しく享受できるようにしたり、また、会社の方針・宣言でLGBTに対する差別をなくす旨記す企業も多く出てきていると共に、LGBTの各種活動に積極的に関与する企業も増えてきています。
外国人、障がい者、高齢者に比べて、LGBTの対応は遅れているものの、多様性の享受の必要性を認識して、今の活動をさらに拡大することが必要です。

(JDIOダイバーシティ・シニアコンサルタント 米倉早織)