イノベーション評価の2つの視点
「ギグエコノミー」は、インターネットにより仕事と労働者をマッチングさせるイノベーションとしてある。イノベーションは大いに是としつつ、やはり何かが足りない。それは、働き手のためになるイノベーションという視点ではないか。
オクスフォード大学のMグラハム教授らによる報告書(「ギグワークのリスクと利点」2017年)では、ギグワークが持つリスクにも焦点が当てられている。ギグワークには差別、低い報酬、過度の労働、不安定さなど解決すべきリスクがあるというのだ。加えて、企業側のリスクも見落とせない。日本での雇用コストの削減と不安定雇用を増やした30年間を振り返ると、それは競争力や生産性の低下リスクを伴っていた。今や労働生産性の落ち込みは深刻であり、イノベーションの衰弱という大きなツケも回っている。
ダイバーシティ経営の「人を大事にする」コンセプトは、企業利益につながるイノベーションが、多様な働き手にもプラスとなる、両方を備えることを追求するものだ。
労働力不足となり、人とソフトによる生産性が課題となる今、企業利益のみを追うかじ取りは片肺飛行となるだろう。「人大事」の経営無しには企業の持続的成長は難しくなる一方である。(FY)