働き方改革の管理職心得
管理職・リーダーに求められる職場環境整備
働き方改革関連法案が成立し、改革項目や指標が明らかになりました。この働き方改革は「経営の構造改革」ともいわれます。高い命題を持つ課題ということですが、対して、改革の進捗を管理する立場である管理者はどのように取り組んだらよいのでしょうか。
求められる管理者像
リーダーシップの発揮
これからの時代に必要なのは、リーダーの役割を併せ持つ「リーダー型管理者」といわれます。ここでの管理者は、目標達成のために部下を指導し、日常業務の進捗管理や問題解決にあたる人。ある程度の権限と立場が確立されています。一方リーダーは、コミットメント意識が高く、行動が先導的である人。チームの方向性や役割を示し、メンバーの力を引き出しながらリーダーシップを発揮します。
物事の動きが不確実で価値観も多様化する時代は、優秀な人材であっても、一人の判断で課題解決をするのは難しくなり、チームの力を引き出すリーダー的役割が大事になりました。全員が知恵を絞り「話を聞き合う」関係は、社員のコミットメントも高めます。
図1は、変化するリーダーシップのスタイルを示したもの、図2は組織が機能するための要素ごとに、管理者のスタイルをまとめたものです。
<図1>変化するリーダーシップ
統率型リーダーシップ | 支援型リーダーシップ |
---|---|
縦型の関係重視強い牽引力で引っ張る支配型 | フラットな関係重視部下が主体的に力を発揮することを支援 |
能力・資質を備えたカリスマ的リーダー今・現在・短期を見る管理者 | サーバントリーダー:サーバントは奉仕、支援の意未来を描く革新者、動機付け、鼓舞 |
トップダウン的手法PDCAを管理 | ファシリテーション的手法部下の自律性を尊重、仕事を適切に任せて支援 |
部下は思考や判断を放棄、リーダーへの依存度が高くなる | 部下が考えて判断することを評価、その潜在能力を引き出し承認、自らも高い情報収集力を持つ |
<図2>組織に必要な要素別管理者のスタイル
組織の要素 | これまでの組織 | これからの組織 | 働き方改革との関係 | 課題・ポイント |
---|---|---|---|---|
目標の共有 | トップダウン型個より全体 | フラット型個人の充実を重視 | 働く制約の除去、働きがいある職場づくり | 長時間労働の是正ワーク・ライフ・バランス |
コミットメント(貢献意欲) | 号令・命令型個の意欲低調 | 内発・誘発型高い個の意欲 | 組織への信頼醸成自律型人材育成 | ダイバーシティ(多様性を活かす) |
モチベーション(動機付け) | インセンティブ型集団主義 | 個の能力・ニーズによる内発型 | 多様な事情や属性を活かしあう | 集団よりは個を重視 |
コミュニケーション | ワンウェイ型個性より均質 | 双方向型多様な価値観重視 | 上下・属性に隔てのない職場づくり | 創造性の発揮 |
リーダーシップ | 統率型主人公はリーダー | 支援型主人公はチーム員 | ダイバーシティ・マネジメント | 異質によるチームワーク |
リーダーシップは”コミットメントシップ”
管理者に必要なリーダーシップについて、アメリカでは社員全員が持つべきスキルであり、そのスキルは誰でも後天的に身につけられると考えられています。このリーダーは、周囲を喚起してコミュニケーションや変化への対応を促す人を指し、図1の支援型リーダーに重なります。日本での「リーダーは一部の人、組織にはリーダーが一人いればよく、他のメンバーに必要なのはフォロワーシップ」というリーダー観とはだいぶ違います。
誰もがリーダーシップのオーナーであるような組織では、リーダーシップは¨コミットメントシップ¨(*造語。主体的参画の意)であり、コミットメントシップがモチベーションの源になります。したがって求められるリーダー型管理者とは、社員一人ひとりをリーダーシップのオーナーに育て、モチベーションを高める管理者といえるでしょう。
一社)日本ダイバーシティ・マネジメント推進機構専務理事 油井文江