ハラスメント対策シリーズ:6

第2章 ハラスメントが起こる背景
1.職場環境の変化
(1)女性比率の増加と非正規労働者の増加
①職場における女性比率の増加
役員を除く女性の雇用者数は、2013年から2019年までに13%、307万人増加しました。また、出産や育児で辞職することが原因で主に39代女性の就業率が下がる「M字カーブ」も解消されています。これは、未婚化や晩婚化が一つの原因で、また、増加した雇用者の57%が「非正規労働者」であることも原因です。新型コロナ感染拡大によりこれらの非正規労働者が、最初に解雇等されている現実も無視することはできません。

図表2-1 配偶関係・年齢階級別女性の労働力率の推移

前述の「非正規労働者」は、男女合わせて34%にまでなっており、正規雇用に占める女性の割合は33%に対し、非正規雇用では63%と、男性正規雇用と女性非正規雇用で職場が構成されていることが実態です。

図表2-2 正規・非正規雇用 男女別構成比

2014年のダボス会議では、政府は女性リーダーを30%とする旨宣言しましたが、役員や課長相当以上の女性比率は15%に届かず、上場企業における女性役員は約1300人と5年で2倍以上になったものの、役員全体に占める割合は5.2%です。また、衆議院では約10%、参議院では約23%、都道府県議会は約10%(2018年12月)、市区議会は15.3%(東京都の28.1%が最高)となっています。
また、ILO第108回総会が、2019年6月10~21日に開催され、仕事の世界における暴力とハラスメントを禁止する初の条約が採択されました。この「仕事の世界における暴力とハラスメント条約」に日本政府は賛成票を投じており、日本政府はその批准のため、今後「労働施策総合推進法」等を改正し、ハラスメントの禁止項目や罰則規定を設ける必要があります。
企業としては、それに一歩先んじて、就業規則などにハラスメントの禁止をうたっていく必要があります。現在、職場における個々の労働者と事業主との間の個別労働紛争の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数が増加しています。これが紛争事案となれば、その処理に費用と時間がかかるだけでなく、従業員と会社の信頼関係にも悪影響を与え、会社のイメージにも響くことになります。ハラスメント防止に及び腰でいることは、経営リスクにもなることを経営者は認識しなければなりません。
②職場における課題
女性の職場における比率は増加したものの、賃金格差はまだあります。また、フルタイム労働者の2019年平均給与は男性の74%と、大きな差があります。これは、責任のある仕事は女性には任せられないという意識が、まだ一部の企業幹部・管理職にあるためと思われます。
また、2013年に企業に要請された3年の育児休暇や、2017年の育児・介護休業法の改正で最長2年の育休可能化があり、育児の長期化で女性の家事・育児の負担が固定化し、職場復帰した後もその割合が変わらず、仕事に専念しづらかったことに加え、2020年の男性育児休暇の取得率13%を掲げたものの、2019年10月時点で7.5%と、残念ながら男性の協力も十分取れなかったことから、女性が家事・育児に掛ける時間を減らすことが充分できず、結果、仕事に割く時間が少なくなったことも理由と思われます。
しかし、業務時間が少なくとも成果を出せる仕組み、それを評価する制度を整えることも企業の責務であり、今後の更なる努力が求められます。

(JDIOダイバーシティ・シニアコンサルタント 米倉早織)