海外のダイバーシティ~採用・昇進プロセスからバイアスを排除

最近ビックリした無意識の偏見対策にGoogle社の中途採用のし方がある。同社で応募者に尋ねるのは「今は何をしているのか」「過去に何をしてきたのか」「これから何をしたいのか」の三つだけ。年齢バイアスや性差別・国籍別バイアスをフリーにするためという。〔出所:『中央公論』2021年1月号、出口治明・村木厚子氏対談記事〕。同じ記事で、米国務省でも採用・昇進・選考時に性別がわからないようにする事例が紹介されていた。官民ともに徹底ぶりが生半可ではない。

アメリカでは、採用や昇進のプロセスからバイアスを排除するテクノロジー開発も進んでいる。応募者の履歴書上の名前(!)や大学名、生年月日、前職の社名などを隠すアプリケーションソフトが代表例。バイアスの原因となる要素を徹底排除する。

また、リアルな面接でのバイアス対策も怠らない。昇進のプロセスや結果を追跡し、影響要素を分析。顔立ちや体型、人事やマネジャーの好みや意思決定をチェックする。短期・一過性の対策ではない追跡する意思と情熱は段違いだ。

アメリカの交響楽団が新メンバーの募集時に、応募者と評価者の間に衝立を立てて「ブラインドオーディション」をしたのは有名な話だ。ジェンダーや人種へのバイアスを排除するべく、応募者を聴くだけで評価する方式をとった。これを初めて行うのはたやすいことではない。問題を突き詰めた結果のアイデアであろう。

ノルウェーは取締役の男女構成比をそれぞれ4割以上にする法制度で知られる。2008年の制定当初は反対が噴出。経営者は「女性人材がいない」、女性は「法律のおかげで出世したと見られる」と反発した。しかし実際に導入してみると「健全な議論と発展につながる」「経済を活性化する」としてすんなり受け入れられた。インセンティブと罰則を備えたこの制度の成功は、国の本気度の¨勝利¨か。

韓国政府は、大統領主導でバイアス排除を推進している。2017年文在寅大統領の指示により本格化。具体的には書類選考と面接の“ブラインド化”をルールに取り入れた。書類から出身地、家族関係、学歴、身長・体重などの身体条件も排除。容貌が判断できる写真貼付もなくした。偏見・差別対策は、大統領の登場まで要するハードル高き事項ということか。

*韓国では、応募者が持つコネクションへの期待から、親や兄弟姉妹の職業、学閥や出身地域が重視される。容貌も重視要素であるなど、採用に影響する様々なバイアスがあるとされている。

               (JDIO 油井文江)